オヤヂィの独言

限りある時間の中でゆっくりと・・・

「情けない・・・」と母

今日母からの電話。
携帯に電話してくるのは初めての事のである。

オヤヂィの生家は築150年を有に超える古い家屋である。
一人守ってきた高齢の母を心配し兄が連れていってからは
住人のいない家となっていた。

それでも季節毎に母が滞在し暫し憂さ晴らしを兼ね和む生活を重ねて
いたのだが、原発事故によりそれも適わなくなった。

そして2日前に我が生家は取り壊された。
以前に兄から古民家ゆえ放射能の影響で壊す事は聞かされていたが
こんなにも早いとは思わなかった。

母も同じである。
壊される前に最後のお別れではないが、確り見ておきたかったのだろう
兄と一緒に実家に行ったらしいのだが、既に重機やトラックが入り壊されて
しまっていた。

それを見て、分かってはいるのだがとても情けなく涙が出たと連絡してきたと
いうわけである。しかも自宅に誰もいない時を見計らって電話。
兄(息子夫婦)に気を使ってか、早々に電話は切られたのだが、何度も
情けないと連呼する。

確かに母としてはそうである。10代で嫁に来てから70年近く暮らしてきた
家が無くなってしまった事は、いた仕方ない事とはいえ、なんと寂しい事か。

最後に「無くなった場所を見に来い」という声は自分で情けないというより
とても悲しそうであった。
気落ちしなければいいとせつに願うばかりだが・・・。

すっかりニュースにもならず無かったかのような原発事故の現状、
悲惨な状況は、人の心にも重大な悲しみを残し、これからもその想いは
限りなく続く・・・